20. Weekend の決別
とうとう、彼が私の元を去った。
個展が終わって一番彼にそばにいてほしいと思っていたこの時期に・・・。
最近、確かに彼はどこか様子がおかしかった。
いつもの彼らしくない不可解な行動をとるようになっていた。
声にもならない声をあげたり、時々黙りこむことも頻繁にあった。
いくら鈍感な私でさえも、はっきりとこれはおかしいと気がつかずにはいられなかった。
でも、今の私にはどうすることもできなかった。
今は一番彼が必要だった。一番頼りににしていた。
だから、そんな現実を直視したくなくて、わざと気がつかないふりをしていたし、
何とかごまかして、この日々を乗り越えようと、努めて平静を装い、できるだけ笑顔で彼に接した。
できることなら、そのまま平穏無事にやり過ごして、何事もないことにしてしまいたかった。
おそらく、そんな私の気持ちを彼本人が一番良くわかっていたのかもしれない。
彼は、個展の案内状を印刷し始めた頃から、少しおかしかった。
「ちょっと多くない?いつもそんなに印刷したことないのに。休もうよ。」
そんな言葉をつぶやいていた気がする。
「年賀状だけでも大変だったのに、またかい。」と、今にも言い出しかねない勢いだった。
彼は、ちょっと古めでのんびり屋さんタイプ。
彼自身も昔から私がアナログ人間なのを熟知していて、
いつも一緒にのぉ~んびりと「手書きのほうが早いと思うよ、たぶんねぇ~。」
といった具合で、私が年賀状を作っているときも、そのパソコンの隣で悠々と鎮座していた。
そんな彼に、ここ最近、「これ印刷して。」と、頼むことが多かったことは否めない。
仕事のない日の都合の良いときにだけ集中的に、彼に目を向けていた私が悪かったんだと思う。
でもこの週末、何とか個展の絵の発送や配達に目処がついて、
やっと次の段階のお礼状作りに入ろうと思った矢先にこんなことって。
突然、口から「ぺっ!」…って、一体全体何がどうしてどうなったの?
話しかけても、指先でつんつんつっついてみても、無言のまま微動だにしない彼。
こんな大切なときに突然私の許を去っていかなくても…。
もう少し落ちついてゆっくりできるまで待っててくれても良かったはずなのに。
彼は相棒から、これから私と一緒にする仕事のことを小耳に挟んでいたのかもしれない。
「また印刷手伝わされるよ、ギーコギーコって。お前遅いもんな、仕事。」
そうなんだ、二人で繋がっては、そんな話してたんだ。
そうなんだ、そういうことか、ふ~ん…。
それとも新しい相棒とそりが合わなかったのか、いずれにせよ、今となってはもうわからない。
彼の新しい相棒とは、去年乗り換えたばかりのおニューなパソコン。
そう、このたび私の許を去った彼の正体は、ちょっと古いプリンターなのだ。
お礼状印刷の葉書を口から出した状態で完全に止まったまま無言になった彼。
リセットボタンを何度押してみても、電源を切って数時間放置してみても、時すでに遅し。
最後の手段でサポートセンターに電話しても、もう家では施しようがない状態で、
修理は最低1万円!もかかるそうな。
うっそぉ~、彼って古いタイプなんですけど、もしや買った方がお得じゃありません?
結局、次のお休みまでにお礼状印刷が間に合いそうもないと決断を下し、
私は彼の残した詰め替え用インクに、たっぷりの未練を残しつつ、○マダ電機へ行くことを決意。
そこで新たな彼とは巡り合ったものの、何もできなかった日曜日…。
壊れたプリンターさながら、抜け殻モードになった私なのでありました。とほほ・・・。(笑)
~ 週末の教訓 ~
いつでもどんなときでも、相手に対し、いっぱい愛を注いであげることを常日頃から心がけましょう。
ハラホロ~( ̄∇ ̄)~ヒレハレ
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