13. 歯医者さんパニック! 後編

 
そして、問題の翌週がやってきた。
親不知を抜く、恐怖のその日がやってきた。
覚悟を決めて、意を決し、鎧兜に身をまとい(・・・たいくらいの気持ちで)、歯医者さんに向かう。
もちろん、BGMはゴジラのテーマ。(伊福部昭さん、ご冥福をお祈り申し上げます)

「大窪さぁ〜ん、中へどぉ〜ぞぉ〜っ♪」
妙に弾んだその声に、余計にこっちは気が沈む。 llllll(-_-;)llllll どよぉ〜ん。。。
椅子に座り、エプロンをされ、ハンカチを握る。

深く呼吸をして、気持ちを落ち着かせるが、呼吸を整えたところで、恐怖感はぬぐえない。
「はい。それじゃ、口あけて。麻酔するから。はい。」
ぐいっ、ぐぎっ、ずごっ。ぢゅわぁ〜っ・・・
「せ、せ、先生、ちょ、ちょ、ちょっと丁寧にしてぐれぇぇぇ・・・。」
と言いたいところだが、この麻酔が刺さったままの状態では言えるわけもない。冷や汗かきまくりだ。
そして再びとてつもなく太い(・・・怖くて実物を見ていないのであくまでも私の想像だが)注射が刺さる。
うぅ、うぅ、うわぁぁぁ・・・。

注射から解放され、麻酔が効くまで待っててくださいと先生の手中からも解放される。
ほっとしたのも束の間、すぐに先生がやって来る。BGMは、ターミネーターだ。♪ダダッダダッ。ダダッダダ・・・。♪
その手には、工具用の大きなペンチが握られていた。
そ、そ、それで!?私の親知らず抜くんですかぁぁぁぁぁ〜!?

私の心の叫びは先生には聞こえない。
その大きなペンチが・・・そのまま私の親知らずをがぶっと噛んだ!
ガリッ!グギッ!ゴリゴリッ!ギュルグルッ!・・・・・。 

そんな音が響いてきたかと思うと、次の瞬間!何とぉーっ! かなづち の登場である。
こっ、こっ、ここはどこ〜っ!?何するのぉ〜っ!?煤i@□@;)
そのかなづちがペンチを打ち、私の脳みそを直撃するかのような音が響く。
ガーンッ!ゴンゴンッ!ガリッガリッ!グイッグイッ!ゴリゴリッ!ギュイギュイッ!

だんだん頭の中が真っ白になって来る。目の前まで真っ白になって来る。体がふわふわ飛んで行く・・・。
「大丈夫ですか!?大丈夫ですか!?大窪さぁ〜んっ!大窪さぁ〜んっ!大窪さぁぁぁぁ〜んっ!」
・・・何だか遠くで私を呼ぶ声がする。
空気が冷たくてとっても美味しい・・・・・んっ!?むむむっ!?な、な、なな何だっ!?

気がつくと、私の口には酸素ボンベが当てられていた。酸素濃度100%である。
私は親知らずを抜いている最中に失神してしまっていた。
最初は余裕で笑みを浮かべていた先生も、パニックになり、危うく救急車を呼ばれるところだったらしい。

実はアルコールに弱い私。麻酔が強すぎたのかもしれないそうだ。

おかげ様で気がついたら親知らずは抜けていた。めでたいのか、めでたくないのか・・・。
もう二度と歯医者さんになんて行けない。そう強く思った歯医者さんごめんねの遠い記憶なのだった。



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